スーツの背中の切れ目 – センターベントとサイドベンツのどちらにするか

スーツのベント

オーダースーツを作るときに迷ってしまうのが、スーツのベントをどうするかです。
ベント(Vent)とは通気孔を意味する英単語で、スーツにおいては上着の後ろの裾部分に作られたスリット(切れ込み)のことを指します。

ベントにはいくつか種類がありますが、それぞれの特徴について解説していきます。

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ベントの種類

ベントはおもに三つの種類に分かれます。

・センターベント

センターベント

センターベント

現在もっとも多く見られるのが、上着の裾に一本だけ切れ込みが入っているセンターベントです。シングルベントともいわれます。

馬に乗るときにジャケットの裾が引っかかってシワになってしまうため、真ん中に切れ込みをいれたのがはじまりとされています。そうした由来から考えると、スポーティーで軽やかさのあるベントといえます。
アメリカンスタイルのスーツでは、センターベントを採用することが多いです

ちなみに同じくセンターに切れ込みの入ったフックベントというものもあり、こちらは鍵括弧(「 )を左右反転したような形をしていて、中央よりやや右寄りの部分がめくれるようになっています。
フックベントはアメリカ発祥のアイビールックのジャケットでよく見られます。

・サイドベンツ

サイドベンツ

サイドベンツ

スーツの背中の左右の部分に切れ込みが入っているタイプをサイドベンツ、もしくはダブルベンツといいます。
切れ込みが二つ入っているので、ベントではなく複数形のベンツを使います。

専門用語を日本語に翻訳するときに冠詞や複数形のSなどは省略されることが多いのに、なぜかこれに関してはきっちりしています(笑
英語圏のサイトではSide Ventとしているところもあるので、もしかしたら単数形でもいいのかもしれません。

サイドベンツはブリティッシュスタイルのスーツに多く見られます
ぱっと見ベントがないように見えるため、エレガントさが感じられますね。

・ノーベント

ノーベント

ノーベント

ベントというのは動きやすくするために作られた実用的なものであり、儀礼的な観点からは、ベントのないノーベントがもっともフォーマル度が高いです。
実際タキシードや礼服などのフォーマルなスーツでは、切れ込みのないノーベントのものが正式な形になります。

ビジネススーツに関しては、かつてゆったりとしたシルエットのスーツが流行っていたときはノーベントのものもあったのですが、体にフィットしたタイトめなシルエットのスーツが主流の現在では、センターベントかサイドベンツのものがほとんどです。

ベントのフォーマル度

ノーベントの説明でフォーマル度が高いと書きましたが、ではセンターベントとサイドベンツではどちらがフォーマル度が高いのでしょうか。
その答えは……

どちらも同じです。

乗馬のためにベントを切ったセンターベントと、脇にサーベルを差しやすくするために作られた「剣吊り」とも呼ばれているサイドベンツでは、後者のほうがフォーマル度が高いといわれることもありますが、サーベル説自体が確たるものではないことと、センターベントはカジュアルすぎるのでサイドベンツのほうが好ましい、というような場が存在しないことから考えると、この二つは同列といってもいいと思います。

つまりフォーマルウェアというものは「場所」と密接に結びついたものですが、センターベントとサイドベンツを区別するような場所はないということです。

ベントの選び方

どのベントを選ぶべきかについてですが、一般的なビジネススーツでは、センターベントとサイドベンツの二択になります。
上で説明したようにこの二つはフォーマル度での差はなく、トレンドの点からいってもどちらもクラシカルなスタイルのため差はありません。

というわけでベントの選択はお好みでOKです。

といってしまうとこの記事の意味がないので、参考までにいくつかポイントを紹介します。

多数派・少数派の観点でいえば、センターベントのほうが多数派です。
特に吊るしのスーツ(量販店で売っている既製品のこと)ではセンターベントが多いのですが、これはスタイルやトレンドによるものというより、ベントを二つ切るよりひとつのほうが仕立ての手間がかからないというコストの問題だと思います。

逆に考えると、手間がかかるサイドベンツはスーツスタイルに対するコダワリを表しているものともいえます。

また、近年はタイトめなスーツが主流ですが、サイドベンツだとお尻部分が浮いてしまうためセンターベントを採用することが多いともいわれています。
もっともこれは程度問題で、最近ではそこまで細身のスーツはあまりないですし、そもそもお尻が浮くくらいタイトなスーツの場合、センターベントだとベントが開いてお尻が見えてしまいます。というわけでベントの選択において、スーツのシルエットはあまり気にしなくていいでしょう。

だからどっちにすりゃいいんだよ! という声が聞こえてきそうなので(笑)まとめると、

・オーダーでスーツを作る際、基本的な形をアメリカンスタイルにするかブリティッシュスタイルにするか選べる場合は、アメリカならセンターベントでイギリスならサイドベンツにする

・上記のようなスタイルの違いが特にない場合は、軽やかなイメージ(センターベント)とエレガントなイメージ(サイドベンツ)のどちらが自分に合っているかを考える

という感じで決めるといいのではないでしょうか。

 

以上、スーツのベントについてでした。

どちらのベントがよりよいとかオシャレということはないので、基本的には好みで選んでOKです。ブリティッシュスタイルのスーツでセンターベントを選んでも問題ありません。

個人的にはどちらかというとセンター派ですね。
サイドベンツだと風が強い日に裾がパカパカするのがちょっと嫌だからというそれだけの理由です(笑

ちなみに買ったばかりのスーツのベント部分についている糸は、型崩れを防ぐための「しつけ糸」です。着る前に外してしまいましょう。

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