ある日、洗濯後のヒートテックをふと見てみると、白い粉のようなものが背中一面に吹き出していて、手で払っても取れない──そんな経験をしたことがある方も多いと思います。
今回は、この謎の白い粉の正体について解説します。
白い粉の正体は劣化したポリウレタン
ヒートテックにはポリウレタン(スパンデックス/エラスタン)が使われています。
ポリウレタンは非常に伸縮性のある繊維で、ヒートテックに限らずストレッチ性のある衣服に多く使われています。
伸び縮みするので着やすさがアップするというメリットがあるのですが、その反面、劣化しやすいというデメリットもあります。
着古したヒートテックの表面に現れる白い粉は、生地に含まれるポリウレタンの糸が劣化して切れ、表面に出てきたものです。
劣化を食い止める対処法はあるのか
ポリウレタンは、紫外線、汗、皮脂、摩擦、塩素、洗濯時の水分などによって劣化が進んでいきます。汗をかきやすく摩擦も多い、脇や背中のあたりに白い粉が出やすいのはそのためです。
長持ちさせるには上記の状態を避ければいいのですが、アンダーウェアとして日常的に着るヒートテックにおいて、これらのことを完全に避けるのは無理です。
対処法としては、ローテーションを組んで、同じものを続けて着ないようにするくらいしかありません。あとは塩素系漂白剤を使わず、直射日光を避けて陰干しするくらいですかね。ヒートテックをわざわざ陰干しするというのもちょっと現実的ではないですが……。
残念ながら、白い粉が吹いてしまったポリウレタン混の生地については修復不可です。
もちろんそのまま着続けることはできますが、ストレッチ性が失われ、生地が伸びきった状態になるので、ヒートテックのように体にフィットさせることで保温性を高めているものは、段々とその機能性が落ちていきます。
ガムテープなどで生地表面に浮き出た白い糸をある程度除去することはできますが、範囲が広いので手間がかかりますし、千切れた糸を取り除いたところで機能性は回復しないので対症療法にしかなりません。
ヒートテックの寿命の目安
ポリウレタン混の衣服の寿命は一般的に製造されてから3年程度といわれますが、ヒートテックの場合は肌に直接触れるものであり着用頻度も高いので、それよりももっと短いと考えられます。
個人的な体感では、もって2シーズンくらいかなと思います(寒冷時のみ着用で)。
そもそもポリウレタンは空気中の水分によっても加水分解を起こすので、保管方法に関わらず時間とともに劣化するものと捉える必要があります。
粉が吹いたものは寿命と割り切って、新しいものを買ったほうが機能的にも見栄え的にもオススメです。
ある意味、買い替えの目安と考えることもできますね。
まとめ
ポリウレタンは非常に有用性のある素材で、ストレッチ性だけでなく、合皮として革のような風合いを出すためにも使われます。
しかしその場合においても劣化を避けることはできません。
ポリウレタンに代わる安価で耐久性に優れた同質の素材が出てくるまでは、現在の状況が大きく変わることはないでしょう。
ポリウレタン混の衣類は経年劣化するものと理解した上で、下着類のように消耗品として割り切ったり、あるいは期間限定のトレンドものとして取り入れたりする、というのがスマートな活用法かなと思います。