スリーピースとはジャケットの下にベストを着るタイプのスーツです。
同じ生地で作られた「ジャケット」「パンツ(トラウザーズ)」「ベスト」、この3つがそろってスリーピースとなります(「三つ揃え」と呼ばれることもあります)。
元々のスーツの形はスリーピースであり、フォーマルな印象を与えるスーツです。大人の男の雰囲気が漂うので、30代以上に特にオススメします。
スリーピースのジャケットのボタンは留める? 留めない?
2つボタン、3つボタンのスーツではジャケットの一番下のボタンは外しますが、スリーピースの場合も同様に、ボタンを留めるときは一番下のボタンを外します。
「留めるときは」と書いたのは、スリーピースの場合は、ボタンをすべて外して着用してもいいことになっているからです(※ダブルのスーツのときはボタンは外しません)。
どちらを選択するかについてですが、スリーピースを着用している方の多くは、ジャケットのボタンをすべて外していることが多いように見受けられるので、通常時は外したままで問題ないでしょう。
失礼があってはいけない場面や、自分に注目が集まるような重要なときにはボタンを留めるようにしましょう。
スリーピースのベストのボタンはどう留めるべきか
スリーピースの中に着るベスト(ウエストコート)のボタンは、ジャケットと同じく一番下のボタンを外すべきといわれていますが、実際どのように留めるかに関しては少し複雑で、単純にこうすべきという指針がありません。
よく知られたエピソードがあります。
19世紀はじめのイギリス王ジョージ4世が、まだ摂政だったころのお話です。
とあるパーティーに出席したジョージ4世でしたが、彼はベストの一番下のボタンを締め忘れていました。ジョージ4世はお腹が出ていたということもあり、その締め忘れはすごく目立ったことでしょう。
イギリスの社交界で洒落者として知られていたボー・ブランメルは、ジョージ4世に気を遣って自分もそっとベストの一番下のボタンを外しました。そんなブランメルの格好を見た出席者たちは、それが最新の着こなしだと勘違いして、その真似をしてボタンを外しはじめたそうです。
そしてそれ以降、スリーピースのベストの一番下のボタンは留めないことが慣習になったといわれています。
さて、このエピソードからはじまったとされる慣習ですが、じつは根拠としてはちょっとあやふやな部分があります。
ウェブをざっと見た限りですが、英語圏においてはスリーピースの一番下のボタンを外すことと、この逸話を関連付けたものは見当たりませんでした(ジョージ4世ではなく、エドワード7世の似たようなエピソードはあり)。
仮にジョージ4世の話が本当だとしても、それまではボタンをすべて留めるのがマナーであったということにもなります。
もっとも現在の英語圏においても、ベストの一番下のボタンは外すべき、というのが主流のようです。
結論としては、ベストの下の斜めにカットされている部分、そこにボタンがついている場合は明確に飾りボタンなので留める必要はなく(留めると形がおかしくなる)、それ以外の場合でも基本的には外しておいて問題ないです。
ひとついえるのは、留めたからといってマナー違反にあたるような、そういった類いのものではないということです。ジャケットと同様に、形を崩さないためという理由のほうが大きいと思います。
ちなみに一番上のボタンを外すのはNGなので注意してください。
スリーピースのパンツにベルトは必要?
本来のスリーピースのスーツではベルトは巻かず、ボタンで留めるタイプのサスペンダーでパンツを吊るします。ベルトを巻くことでベストの下部が浮いてしまうのを防ぐためです。
とはいえ最近のスリーピーススーツはベルトループのついたものが多く、その場合はベルトを巻いても問題ありません。
ただベストの下からベルトのバックルが見えるのは格好悪いので気をつけてください。
その場合はベストが短すぎるか、パンツの股上が浅すぎるのが原因です。
また、ネクタイの先がベストの下から見えないように調整しておきましょう。